本日色彩検定1級の2次試験を受けてきました。
1級は2級までと異なり範囲も広く実技の2次試験があるにも関わらず教材が乏しく対策が面倒でした。
解答速報では9割5分取れていたので合格しているはず*1。受験料もそれなりにするし一発合格してしまいたい…という思いが報われそうで一安心です。
本記事では受験までにおこなったことをまとめてみます。来年受ける人、独学受験を検討している人の参考になれば幸いです。
はじめに
私は色彩検定を趣味として受験しました。なのでこれから書く対策も試験に合格するための勉強に特化しており、カラーコーディネーターなどの実務とは乖離する内容も多くあると思います。その点ご了承ください。
色彩検定とは
文部科学省後援の公的資格です。1級以外は夏期・冬期の年2回開催(1級は冬期のみ)。
色の基礎から、配色技法(色の組み合わせ方)、専門分野における利用などを幅広く学習します。
3級・2級・1級とユニバーサルデザインについて扱うUC級があり、どれも受験資格は特にありません。
前述の通り1級のみ2次試験があります。
www.aft.or.jp
用意したもの
公式テキスト1級編
私は一昨年、昨年にそれぞれ3級、2級を受けているのですが、その時は成美堂出版の「1回で合格!」シリーズしか買っていないので*2公式テキストを買うのは初めてでした。
YouTubeにテキストの要約動画もあるのですが、XYZ表色系など内容が結構複雑なところもあるのでやはり公式テキストを通読して全体像を理解した方が身になります。
B5サイズでそれなりに場所も取るので電子版が出ていたらと思ったのですが、アナログな業界なのか紙版しか無かったです。Kindle出して。
書き込みをしなくても何度も読めばなんとなく頭に入ってくるのでペイしたい人は綺麗に扱って受験後にメルカリで売りましょう。
過去問題集3年分
過去問が1年分ずつでしか売られていないのは少し謎ですが自分が必要なだけの年数をバラ買いできるのは良いのかも。
おすすめは3年分です。1年分だと感覚が掴めないし5年あっても問題の傾向が古かったりしてあまり役立ちません。特に2020年度のテキスト改訂に伴い試験問題の傾向も変わっているので、2019年度以前のものは来年以降受験する人は不要です。
2022年の過去問にはほんの少しですが練習問題も入っていました。今後も頼む。
2次試験には問題用紙左下のカラーカードを切り取って貼付する問題があるのですが、過去問もメルカリに出したい人はコピーして別紙で解きましょう。
2次対策に特化した問題集もあるようですが、私がAmazonのレビューで調べた限り改訂後の傾向には追いつけていないっぽいので無理して手を出さなくても良いと思います。
新配色カード199a
2次試験で配布されるものと同じカラーカードを用意しておきます。後述のノート・単語帳作成に使用するほか、本番と同じ手触りに慣れておく目的でも必要です。
細かいですが、トーンの並び順*3と裏側のドットが0.5cm間隔であることを覚えておきましょう。回答時に切り取るのが少し楽になるはず。
受験応援サイトを見ると持ち歩き用と貼り付け用で2冊必要だとか、いやいや10冊買えとか言われていますが1冊でなんとかなります。
ノート
残念ながら1級テキストだけでは1級2次の試験範囲をカバーしておらず本当は3級・2級の公式テキストも必要なんですが*4、あまりお金もかけたくないので2次試験に必要な知識だけネットからかき集めて暗記帳とするためのノートです。
ついでに余ったページで過去問の答案記入にも使いました。持ち歩きやすいように私は無印でA6サイズのものを買いましたが、問題を解くのには流石に小さすぎたので兼用するならB6やA5でも良いかもしれません。
図なども書き込むので方眼がおすすめです。
単語帳2冊
2次試験に必須なJIS慣用色名-PCCS値の暗記に使います。小さい文字でもいける人は無印のがリーズナブルでおすすめです。1冊100枚入っているのですが、覚える色は130色近くあるので2冊必要なわけです。余った分は配色イメージ、配色技法を覚えるのに活用します。
勉強方法
1. 学習計画を立てる
やり方は人それぞれですが、私は資格試験を受ける前にいつも大まかな学習計画を立てます。今回は下記のように立てました。
- 9月:公式サイトの例題、受験者のブログやサイトで問題傾向のリサーチ。教材購入。暗記ノートと単語帳の作成。
- 10月:平日は公式テキストを空き時間にパラパラ。休日は1次の過去問を1年度分ずつ解く。
- 11月:1次試験までは過去問で間違った箇所の復習。1次試験後から平日はひたすら暗記事項のチェック、休日は2次の過去問を1年度分ずつ解く。
- 12月:2次試験当日まで過去問で間違った箇所と暗記事項の復習。
やることを予め決めておくだけでも気が楽になります。サボりや体調不良も考慮して1次と2次でそれぞれ1週分くらいバッファがあるとなおよし。
実際に今回は1次と2次の間に体調不良で1週間ほどブランクがありましたが、バッファのおかげで吸収できました。
2. 2次対策ノートと単語帳を作る
ここが個人的に肝でした。前述のノートに2次対策に必要な知識を書き込みます。具体的には下記です。
内容 | 備考 |
---|---|
PCCS色相環 | 日本語名は暗唱できるように。真上=8番=黄であることと真向かいが+12であることが頭に入っていれば基本OK。 |
マンセル表色系 | 2級を飛ばした人はしっかり目に。2級保持者も記法と等色相面に慣れておくため書き出すことをおすすめします。 |
トーン表 | 「色彩検定 トーン表」で検索して出てきたものを模写した上で左に明度の高低の矢印をつけておき、明清色・暗清色・純色・中間色、無彩色・低彩度・中彩度・高彩度がそれぞれどこまでかも囲んでおきます。 |
配色理論 | 「同一・隣接・類似・中差・対照・補色」がそれぞれ色相差いくつなのか、「同一・類似・対照」トーンとはどことどこの関係にあるものなのかをまとめておきます。 |
配色技法 | 「色彩検定 配色技法 1級」で検索して出てきた技法の色相とトーン指示(ドミナントカラーなら同一〜類似色相でトーンは任意、など)をまとめます。ナチュラルハーモニー・コンプレックスハーモニーも一緒にまとめておきましょう。 |
配色イメージ | 「色彩検定 配色イメージ 1級」で検索して出てきた10種類の配色イメージの名前・特徴・色相とトーンの指示をまとめます。可能なら表や配色例もコピーして貼ると視覚的に覚えられて良いです。 |
慣用色名PCCS値一覧 | トーンごとにカラーカードを各色1cm×1cmに切り取って貼り付け、対応するPCCS値とあれば近似する慣用色名を書き込みます。慣用色名の対応は「慣用色名 pccs」で検索するとありがたい資料がゴロゴロ見つかります。トーンごとにページを変えると大まかなトーンごとの色感覚も掴めて良いです。 |
私はこの他に下記も書きこんでいたのですが、ここ1〜2年の試験では出ていないのでどんな傾向変更にも対応したい心配性な人以外は捨てても良いかと思います(出ないという保証は全くないです)。
- マンセル・PCCS変換表
- トーン別彩度・明度表
- それぞれのトーンのイメージ(「ディープ=伝統的な」など)
- 配色の基本的な技法(アクセントカラー、セパレーション、グラデーション)
- 用語(色料の三原色、色光の三原色、心理四原色)
前述の単語帳も作成します。
表に慣用色名、裏にPCCS近似値と解説を書き込んで近似値のカラーカードを切り取ったものを貼ります。
最初は慣用色名を見てPCCS近似値が答えられる状態を目指しますが、慣れてきたら裏面からめくって解説を読む→慣用色名を答える方式も行ってください。試験本番では解説だけを見て慣用色名とPCCS近似値を回答することになります。
解説と近似値はirodori大学さんの動画を参考にしました。
マンセルで定義したものをPCCSの限られた色の中で変換するのは無理があるので、色によっては近似値にブレがあります。なので、ノートで作った慣用色名PCCS値一覧とはあえて違うソースから拾ってくることでブレがある色を潜在意識に刷り込んでおきます。すると受験時にもし選択肢の中に単語帳で覚えた近似値がなくても落ち着いて近い色を探せると思います。
多少違いがあってもたいていは類似トーンだったり隣接・類似色相だったりするので、まずは単語帳の近似値を確実に覚えた上で対応できると良いです。
なお、2020年度の改訂で試験範囲から消えた色と足された色がそれぞれあるようなので、サイトを見る時には更新日時にも注意してください。
3. 1次の過去問を解く
ここまできたらあとは問題を解くだけです。最初は全然歯が立たないので割り切って問題形式に慣れることに徹します。採点の際に各問題が公式テキストのどの章から出ているかをメモっておき、正答率の低い章から優先してテキストを再度読み込みます。毎年似たような問題が出ているので3年やれば徐々に正答率が上がってくるはずです。今年に近い年度の問題から解いていき、練習問題は試験前日に取っておきました。
4. 2次の過去問を解く
カラーカード問題のクセが強いので初見だと取っ付きにくいかもしれませんが、1次の知識、そして先ほどのノートと単語帳が頭に入っていればそんなに怖くないはずです。
解答時にカラーカードを切って貼る練習もした方が良いと書いてあるサイトもありますが、正直試験時間は1次よりもがあるのであんまりそこには時間をかけずPCCSの記号だけ答えて合っていればカラーカードも選べたことにして採点するのが時短です。
間違えた問題については、PCCS近似値・配色技法・トーン表などのうちどの知識が足りなかったのか、要因を分析して、弱点を優先的にケアするのが大事です。
1次試験では今年に近い年度から解いていきましたが、2次試験では問題の傾向の変化が激しかったので、一番古い年度をやったあともう一度昨年度の問題に立ち返りました。また、1次試験の問題が2次に移動した年もあるので、1次試験の該当する問題も改めて解きました。
受験当日
1次試験
1級は3級・2級・UC級全部が終わったあとなので試験時間がやや遅めです。公式テキスト眺めつつのんびりお昼を取ってから向かいました。やや寒い日でしたが私が受けた会場は暖房ガンガンだったので脱ぎ着しやすい服装で行って正解でした。
問題数もそれなりに多いので1周目はサクサク直感で回答し、2周目で問題用紙に答えた番号をメモりながらチェックし、3周目でマークミスがないか確認すると良いと思います。
私は1次を受け終えてから気が抜けて2次対策のスタートダッシュが遅れたので、1次が終わって帰宅したら2次の例題をチラ見して自分を焦らせるのもありだと思います。
2次試験
なぜだか2次の試験時間はお昼モロ被りです。試験後まで食べないのも空腹が気になるし、かといってガッツリ食べても眠くなるので、行きに軽く食べておいて試験後にも軽く食べる分割法にしました。良い感じでした。
問題傾向の変化が大きいとかなりメンタルにくるので最初に問題全体をチェックしてから臨みます。カラーカードを貼るのは最後に取っておいて、記号だけメモしておきます。カラーカードを切り落とす時にも念の為裏面に記号を書き込んでおきます。問題用紙兼回答用紙にメモ欄があるのですが、私は問題と照らし合わせて見たかったので一緒に配られた問題用紙の縮小版にトーン表などをメモしていました。
あとは2級受験時に「スプリットコンプリメンタリー」を「スプリッドコンプリメンタリー」と書いて落とした過去があるので、記述問題はミスが無いか入念にチェックしました。気をつけたことはこれくらいですかね。
おわりに
1級問題を初めて見た時は2級までとの難易度の違いにビビっていましたが、ネットの海の先輩方の力をお借りしてなんとか来れました。ありがたや…。
2次対策をしている間は街中の服や建物の色が脳内でPCCS値に変換される病(?)にもかかりましたが、今となっては良い思い出です。
元々、新卒で入った会社のデザイナーさんに勧められて3級を受けましたが、割と直感で解けたので向いているのかも?と段々ハマっていって、気がつけば2級、1級と受けていきました。これほど楽しく勉強できた資格はこれまでの人生で初めてかもしれません。
UC級まで取ってコンプリートするかはちょっと迷い中ですが、また何か機会があればチャレンジしてみようと思います。
1級は特に情報の少ない戦いですがともに乗り切っていきましょう。